Ableton-美学校 キックオフmtgのノート③
今回は「結合・クロップ・分割」です。
実用性というより、「こういうもんなのね〜」という話です。
第①回:アルペジエーターの並列応用
第②回:クロスフェーダーでミュート処理
第③回:結合・クロップ・分割
第④回:Alt+Space再生
第⑤回:オートメーションの絶対/相対 +漏れた話
結合・クロップ・分割
結合はくっつけるだけ、分割は分けるだけ、実はそれだけではないです。
結合
色々な調整を取り込んだ、クリップを新規作成する
クロップ
Start/Endだけ調整した、クリップを新規作成する
分割
Start/Endだけ調整した、クリップを複製する
違いがわかりやすいので、オーディオクリップに特化して話を進めます。
結合 ⌘J
「2つ以上のクリップをくっつけて1つのものにする」用途と思われがちですが(もちろん正解ですが)、
こいつは一番複雑で、ポイントが3つあります。
「選択範囲を1つのクリップにする」
2つのクリップを選ぶ=2つぶんの範囲を1つのクリップにするし、
クリップの無い範囲まで選択していれば、無音区間として取り込むことができるし、
たった1つのクリップを選んだ状態でも実行できます。
クリップの一部分だけを選択していれば、その前後は切り捨てたクリップができます。
「新規オーディオファイル化する」
.wavファイルが Project/Samples/Processed/Consolidateに生成されます。
バウンスみたいなもんですね。
「調整がファイルに反映される」
わかりやすいのは音量。
結合を実行しても一見音量は変わっていないのですが、実際は波形をノーマライズして保存した上で、ゲインを元まで下げたクリップに置き換わっています。
また、クリップ端フェードや、クリップエンベロープ等も波形に組み込まれたファイルになります。
同じクリップ3つを並べ、1つ"結合"したら音量が-5.53dBになる様子や、フェードをつけてから"結合"したらそれが波形に記録されている様子です↓
まとめると、クリップの設定を反映したうえで、選択範囲を、ファイルとしてバウンスする。
元のファイルを"編集"した上でバウンスするので、「素材として極力劣化させたくない〜」って時は注意です。
おすすめの利用シチュエーションは、
- 2つのクリップを結合したい
- 短いキックを4つ置いてみたけど、これを4つうちの1小節ループとしてクリップにしたい
- 逆再生シンバルがハンパな長さだから、位置合わせしやすいように頭に無音を足してグリッドに合った長さにしたい
- 録音でできたクリップを、フェードかけたり長さも揃えて、ノーマライズまでして調整済みファイルにしちゃいたい
- アレンジメントでオーディオ直貼りで作ったドラムを、セッションビューで使えるステムループにしたい↓
など。
クロップ
結合よりはずっとシンプルなので、比較しながら見てみます。
こいつは、選択範囲ではなく、「1つのクリップを、1つのクリップにする」というものです。
複数クリップを選んでも、それぞれ別々にクロップされます。
無音区間も取り込みません。
4つまとめて"クロップ"しても、4つ別々なようす↓
「新規オーディオファイル化する」のは結合と同じです。
.wavファイルがProject/Samples/Processed/Cropにできます。
「調整は反映されません」。音量もフェードもエンベロープもそのまま。
じゃあ元のファイルがコピーされるだけじゃないか!ということなのですが、
クリップの "Start/Endだけは反映される" んです。
つまり、元のクリップの頭とお尻のいらないところを削ってからクロップすると、
そこが取り除かれた新しいファイルが生成されます。
おすすめの利用シチュエーションは、
- 録音でできたクリップの、使う部分だけを切り出してファイル化したい。それ以外の編集はまだ加えたくない
- 古いサンプリングCDで、1つのwavファイルに音ネタが6種類とか並んでるのを別々に切り出したい
など。
分割 ⌘E
更に単純です。カーソルに合わせてクリップを分割します。
範囲選択していれば、その範囲を中抜きするように、両端を分割します。
この時、あたらしいファイルは生成されず、ただ、「Start/Endだけが違う同じ設定のクリップ」が並びます。
1つのクリップの一部分を"結合" したときと比べると、そのStart/Endの外側が切り捨てられていません。
クリップの一部の切り出しに使っても、あとですぐもとに戻せるわけです。
破壊編集もされず、ファイルも新規作成されず、一番「なにも起こらない」ので気軽に使えます。
ここでようやくMIDIクリップの話をします。
MIDIクリップは結合やクロップをしても「オーディオファイルが生成」されるわけではないですが、
新たにクリップが生成されるという意味では、分割とは立場が違います。
例えば、MIDI鍵盤をだらだら弾いて、演奏を録ったとします。
「上手くできた一部分だけ残して、あとはいらないな」という時、
- 残す範囲を選んで分割:元のクリップの範囲を縮めただけで、全演奏データを持ったままです。
- 残す範囲を選んで結合:選んだ範囲の外側、使わない部分は消し去ったクリップになります。
このように、字面から想像つかない使い方が、特に結合にはあるので、
特徴をおさえておくと作業効率が上がるかもしれないし、何の役にも立たないかもしれません!
つづく
第①回:アルペジエーターの並列応用
第②回:クロスフェーダーでミュート処理
第③回:結合・クロップ・分割
第④回:Alt+Space再生
第⑤回:オートメーションの絶対/相対 +漏れた話