Hercelot LOG

変な音楽とか

ADSRの話 第5回『実践編:よくあるパターン集』

 
前回
hercelot.hatenablog.com



さあ最後は、実践パターン集です。
f:id:hercelot:20190223204026p:plain:w300
おなじみの底抜け五角形をおれがわかりにくいと思う理由は、
これは「A, D, S, Rすべてをほどほどにした状態」であるため。
実際こう設定することあんまりないよね?直感的じゃないよね?と思っているからだ。

とはいえ、図1つで説明しようと思ったらこれが正解なのもわかる。
ここでは、図を幾つも使ってパターン別に紹介してみる。

〇〇型 という名前は、半分くらいはおれが勝手につけているので、他所では通じないかもよ!


Gate 型

f:id:hercelot:20190808095222p:plain
A=0、D=なんでも、S=最大、R=0
鍵盤を押せば鳴る!離せば止まる!シンプル!
過去回では「ブザー」という言葉で説明してたのがこれ。

触った瞬間から音量マックスだし、止まる時もすぐ止まるので、ザ・電子音って感じ。
ソロのリードに使えばキレの良さがメロディの存在感を引き立ててくれるし、
和音に使えばFuture Bassみたくコードそのものを主役にするのにも向いてるね。
丸めの音色にこのエンベロープを使うと、オルガンっぽくなる。


SR 型

f:id:hercelot:20190808095241p:plain
A=0、D=なんでも、S=最大、R=好きなだけ
上の発展形。プツッと止まるんじゃなくて、スッと消える感じにする。
キレが減るぶん、ナチュラルで馴染みもよくなる。

ポリシンセでこの設定にして、メロディやアルペジオを弾くと、余韻が重なってきれいに聴こえる。
また、チョットRつけるだけでも、演奏時のリズム感の悪さやミスを隠せるぞ。
腕に自信のある人は、R無しのほうがキレキレでかっこよくなる……かも?


ASR型

f:id:hercelot:20190808095258p:plain
A=好きなだけ、D=なんでも、S=最大、R=好きなだけ
SR 型に さらにアタックタイムを追加。
鳴り始めも鳴り終わりもキレがなくて、ふわっとしてる。

長いアタックタイムを活かすためには、長めに弾くことになるので、
この設定をしたシンセは、曲の中で鳴ってる時間が長くなる。
なので和音を漂わせるのに向いてて、パッド型とも言うかも。

AとRをちょこっと程度にしておけば、ゆるふわリードシンセとしてメロディにも使える。
おれみたいに鍵盤がヘタでも、人前でごまかしごまかし弾けるかもしれない!


DSR型

f:id:hercelot:20190808095316p:plain
A=0、D=なんでも、S=ほどほど、R=なんでも
SR 型 のSを下げたパターン。
アタマのインパクト(アタック感と言ったりする)を強調した形なので、よりリズムが際立つ。
だからベースとかに良いかな。でも重たいクラブミュージックにおいては、キックの邪魔をしてしまうかも。
キーボード系に使うのも全然アリ。


ADSR型

f:id:hercelot:20190808095333p:plain
A=短め、D=なんでも、S=ほどほど、R=なんでも
おなじみ底抜け五角形です。
この記事の最初に貼った図よりは形がやや偏ってるんだけど、実際使うならこういうバランスじゃないかなー
これもやりたいことはアタマを目立たせることです。
アタックタイムがあるからアタマがパチッとはしてないけど、もぞもぞと存在感があるかも。

Gate型と比べるとどんどん形が複雑になってきたので、より生っぽいニュアンスになっている。
ブラスとかに向いてるかな。

第2回の最後で、音量以外を変えるエンベロープについてちょっと触れたけど、音量の代わりにローパスフィルターを操作するってのもメチャメチャ頻出の手法。ADSR型でブラスっぽくするならフィルターにかけたほうが、ムァッ とした音色にできるかな。……このへんはおまけ編で追記しよう。


1shot 型

f:id:hercelot:20190808095400p:plain
A=0、D=好きなだけ、S=0、R=Dと同じにする
打楽器みたいに、タン!と鳴る形。
DとRを同じ長さにするのがミソで、こうすることで、指を"離す"タイミングが関係なくなって、いつも同じ音を鳴らすことができる。

D=Rを短くすれば、速いアルペジオとか、ボンボン言う打楽器的なベース、和音で鳴らせばプラック、コードスタブなんて言われる音色にも、広く向いている。
D=Rが長めだと、ベルっぽい音や、一発ネタの効果音などにも使える。


テクとしては、「打楽器みたいにボンボン言う、短めのシンセベース」を作る時は、ここからSをほんの少し上げておくのがオススメ。
そうすると、音符の長さがちょっとだけ余韻の長さに反映されるので、「基本的には同じボンボンだけど、人間っぽい表情がつけやすく生き生きとしたベースライン」にできるかもしれない! ほんとかよ?


ピアノ型

f:id:hercelot:20190808095419p:plain
A=0、D=かなり長め、S=0、R=短め
1shot型に比べて、Dを長めにしてある。
S=0なので持続はしないんだけど、ゆ〜〜っくり音が小さくなっていく。
鳴ってる最中に指を離すと、スッと音が消える。
SR型と比べると、音量がつねに変わり続けてるから、電子音っぽさは少し減るかも。

ピアノ、エレピなどの鍵盤楽器はこういう形をしてるので、キーボード的に弾きたい音色に向いてる。
「1shot型でベルっぽい音色を作ったけど、余韻が長いから、じゃんじゃん弾くと音が濁っちゃうんだよねえ」なんて時は、リアルさを捨ててRを縮めちゃうのも吉!


打楽器ミュート型

f:id:hercelot:20190808095434p:plain
A=0、D=短め、S=0、R=Dより長め
逆に、DよりRを長くしてみたパターンなんだけど、パッと見ではわからないね。

弾いたらすぐに音が消えていくけど、指を離すと余韻が残る。
指を離すのが遅くて、先に消えきっちゃったら、余韻もなにもない。

これが何に良いかっていうと、
「パッと(短く)弾けば、余韻がオープンに伸びる。グッと(長く)押し込めば、デッドにミュートが効く。」
バスドラムのクローズ/オープン奏法とかと同じだね。ペダルを踏み続けるとタイト。

パーカッション系を鍵盤で弾く時に良いかな〜? 弾きこなせる人いるのかな。
メジャーではないです。
DとRに極端な差をつけなくても、1shot型にちょっと色を付け足すぐらいの気持ちで気軽にいじってみよう。




代表的なところを取り上げてみました。
組み合わせは幾らでもあるし、生楽器に似せる必要もないので、
「キミだけのオリジナル設定をみつけてくれ!」と言いたいですが、
これら基本形にちょっとアレンジを加えていく感じでも十分楽しめると思う。


とりあえず、ADSRエンベロープについては今回で終了!
次回からおまけです。

hercelot.hatenablog.com

CONCRETE SOUND FOR OUR CHILDHOOD