Hercelot LOG

変な音楽とか

ADSRの話 第4回『Attack, Decay, Sustain, Release』

 


前回は、設定が4つあるという話でした。
hercelot.hatenablog.com


さて今回は、その4つを具体的に見ていくんだが、正直めんどうくさい。
てか、こういう初歩的な説明は、世の中にすでに沢山あるのだよ。

なので、実用例だけあればいい!という人は次回まで飛ばしてOK!
長げーから。ウンザリしちゃっても逆効果だもんなあ。


Attack

アタックって英語は、攻撃?と思うが、なんか病気を発症するとか、仕事に取り掛かるなんて意味もある。
シンセでは、音の「立ち上がりにかかる"時間"」を設定することができる。

第2回のブザーを思い出してみよう。
ボタンを押した瞬間に「ブ〜〜」といきなりうるさく鳴ってくれた。
これは、0秒で立ち上がった、Attackが0ということだ。
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じゃあAttackを増やすと、
いきなりマックス音量になるのではなく、
時間をかけてふわ〜っと大きくなる感じになる。
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長くもなく0でもない、間ぐらいに調整すると、
たとえば頑張ってトランペットやホルンを吹いた時みたいに、
プワッ ムワッ みたいな柔らかい音を作れたりもする。



(アホほどややこしいことに、打ち込みやミキシングの世界では、アタックと言うとその時々で違う意味になったりする! あーめんどくせ。でも、どれにも共通して言えるのは、音の「立ち上がり」「鳴り始め」の話をしてるってことだ。シンセだと、「アタックタイムが長い・大きい」と「"アタック感・音の頭の存在感"は弱い」。コンプレッサーだと「アタックタイムをやや長めに取る」と「アタック感が強調される」。逆じゃん!何なの。そういうわけでめんどいので、わからないときは半笑いで読み飛ばしましょう。)



Release

リリースは手放すみたいな意味。釣りのキャッチアンドリリースとかね。
手放すという文字通り、「"指を離した"あとに 音が消えるまでの"時間"」を設定できる。
「余韻の長さ」。

ブザーでは指を離した瞬間、すぐに無音になっていた。
これは、0秒で音が消えた、Releaseが0ということ。

インターホンはどうだっただろう。
ボタンを押してすぐに指を離しても、ピンポ〜ンと鳴っている。Releaseが十分長いっていうこと。
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太鼓なら、ドーンと叩いても余韻が長いし = Release長め
ハーモニカなら、息を吹くのをやめたら音もスッと止まる = Release短め



Sustain

サスティンは持続、みたいな意味。
実は、ADSRの中でこいつだけ仲間外れで、"時間"の設定ではないのだ。
("音量の比率"という、わかりにくいものになっているぞ。)


まずはSustainが「0か、0じゃないか」にだけ注目してみる。
0のときは、「持続しない、ボタンを押し続けてもいつか消えちゃう音」になるし、
0より大きいと、「永遠に鳴らし続けられる音」になる。


どっちにあたるのか、知ってる音を分類してみよう。

  • インターホンのボタンをずっと押し続けても、ピンポーンはいつか消えてしまう。【Sustain 0】
  • ブザーは押してる間ずっと鳴ってくれそうだ。【0じゃない】
  • 太鼓はどうだろう? 1回叩いてバチをずっと押し当てていても、音は止まっちゃう。【0】
  • リコーダーは? 息を吹き続ければずっと鳴っている(息切れしてしまうけど!)。【0じゃない】
  • グランドピアノ。鍵盤ひとつ押し続けても、1分も待てば鳴り終わっちゃうだろう。【0】




さて、Sustainが「0か、否か」だけを話してきたけども、
0より「ちょっとだけ大きいか、俄然デカいか」ではどう違うのか?

先に答えを言うと、
「立ち上がりきった瞬間の音量を100%としたとき、持続音は何%の音量か」を設定できる。


……????


これを読み解くために、例の図に戻ってみよう。
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エンベロープは、「音量を変化させる」ものだった。
しかしSでは、音量が「変化しない!一定!」だ。

その一定って、どのくらいの音量でキープさせるのか?
それをSustainで決められる。
Sustain 0なら、「音量0で持続する」=「それってつまり持続してない」ということだったのだ。


うーん、持続するときの音量が決められるのはなんとなくわかったよ。
でも上の図では、Sの手前になにやらひと山あるよね……
いったいいつから、その持続ってやつが始まるのさ?


Decay

ディケイは腐るとか衰えるって意味。
シンセでは、「鳴らし続けてるつもりが、音量が減衰していく!」という変化を作るための設定になる。

今までのA、S、Rだけを使ってエンベロープを設定するとこうなる。
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こうして見てみると、ボタンを押してから離すまでは、音量が減ることはない。

しかし実際世の中にある音、または音楽的に使いやすい音って、
「最初にインパクトがあって、その後はパワーダウンしてる」ものが多いのだ。
アタマって目立つし、リズム感にも大きく関わってくるからね。

そんな事情を考えていると、こういう図が思い浮かぶ。
アタマはデカくて、ちょっとパワーダウンして持続。そんで余韻。
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Sustainの持続音量は、アタマの音量よりも少し下がっている。
どのくらいの時間をかけて音量を下げていくか決めるのがDecayなのだ。


たとえば、Decayを長ーくしてみれば、弾き続けてもじわじわ小さくなっていく音になる。
ピアノとかはこうだね。
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最後にまとめよう。
Aはアタマの立ち上がり! ボタンを押した直後の立ち上がりの長さ。
Rはおしりの余韻! 指を離したあとの余韻の長さ。
Sは途中の持続! 押し続けても音が続くかどうか。またその音量。
Dはアタマの減衰! 立ち上がりと途中をつなぐ時間の長さ。



はーめんどくさかったね!意味わかりました?
正直……文字だらけで……その……
こんなん読まなくても、触っていくうちに慣れるとは思うけどねえ。



では次回は実用例です。
hercelot.hatenablog.com

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