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Hercelot LOG

変な音楽とか

2016 Top 10 *2

今年もいっぱいいい音楽聴いて・見つけてすごくたのしかったです。

↓メディアからの依頼などはないけど、例年通り書いた。音楽好きのいちエントリです。

  • 2016年リリースで素敵だった10選
  • 2016年にHercelotが聴いた、2015年以前のリリース10選

どちらも数字が振ってあるけど基本同列の10選です。

暇で暇で暇でしょうがない人は2015年, 2014年, 2013年版もどうぞ。


2016年リリースの素敵な10選


いつもは「今年のリリース」に大して重みがないんだけど、
今年はなぜかまたSoundcloudをめっちゃ見るようになった。
なぜならいい曲がいっぱい出まくってたから
一昨年は古い曲ばかり掘ってたから、たんに波があるんだとおもう。

  1. Quok - Traveller
  2. Ritornell - If Nine Was Eight
  3. salami rose joe louis - son of a sauce!
  4. Ikotu - Clockwork
  5. Frederic Robinson - Flea Waltz
  6. Alon Mor - Associative Delusions
  7. superb lyres - Sober
  8. Trian Kayhatu - Chil Pollins EP
  9. 環ROY×Taquwami×OBKR - ゆめのあと
  10. PARKGOLF - ナイロンとペットボトル

1. Quok - Traveller

Quokはロシアのビートメイカーで16歳。このアルバムは本当に傑作。
ピアノとパッドの幽玄で感傷的な和声に、ガッツリ作り込まれた複雑なビートやパッチワークカットアップが叩き込まれる。
寂寥の中にポッと小さい熱が浮かび、良質なアンビエントと同じ楽しみ方ができるのだが、
ビートとエディットによりその熱に自分がどんどん近づいていく、入り込んでいく感覚になる。
風景と客観、だったはずの鑑賞姿勢が、スッと他人事でなくなる。

特に、このアルバムのフックらしい#2では、男の呟きがループしてサウンドスケープに溶け込んでいき、
3分手前まで来てタイトなビートが入ることで、遠景だったものが自分を取り囲むような温度を持つ。
どの曲もひたすら和声が美しい。#7は曲名通りパッチワークの大仰なFoley Beatが6/8拍子で叩きつけられ、
同じく6/8の#8は物憂げな独唱を金属の断片が取り囲んでいる。

寂しさというのは冷たい側にありつつもきわめて有機的な感情だ。
雄大なものが個人の内側に広がっていくとか、両面的なあやうさがサウンドにもあらわれており、
澄んだピアノと温かいパッド、タイトなビートとガサガサのブレイクス、ウッドベースとニューロベース、現実の環境音の非現実的な組み立てなどがうまくブレンドされている。
おれは世間的なエモいという言葉をあまり支持しないし使わないが、これはとても感情的な音楽。心の内を直に触られる傑作。

人によってはビートレスのほうがいいと思うのかもしれない。
おれはグリッチが入ることでよりパーソナルなものに感じられる。
育ちによると思う。




2. Ritornell - If Nine Was Eight

Flying LotusやDimliteやfLakoをサポートするドラマーのEignerと、映画音楽家のピアニストGeroldの、オーストリアのユニット。
最初に#7を聴いて、色んな金属音がしながらモッタリモッタリと進むへんてこな曲で開眼したんだけど、
ストレートにうっとりできる歌モノの#2、ポエトリーリーディングと逆再生音の#6は正統派で、
何より#5の劇伴のようなビートレス曲が非常に美しく、妖しい。音の余韻をじっと愉しめる曲。

エレクトロニカの勘所を意識できるドラマーがいるジャズ、どれも素晴らしい説がある。



3. salami rose joe louis - son of a sauce!


サンディエゴのひとり宅録家によるキャリアまとめ作。フィジカルではカセットリリース。
主にカシオトーンと囁き声のボーカルが、低音はぼっこり、ピッチもゆらゆら、ローファイにまとめられている。
囁き声はちょっと違うかな、家の中で隣の人に話しかけるくらいの声、
あるいは、子供を寝かしつけるための子守唄くらいのトーン。
なかなか起きられない休日のように覚醒し切らない中をつーーっと流れていく1枚だった。

こんな音楽を作りたくて仕方ないけど、やっぱり、声がめちゃくちゃいいというところで、こうはなれない。
そもそも、こういう声がすごい好きなんです、教えて。
初期Broadcastのゆったりした曲が好きな人とかにもいいよきっと




4. Ikotu - Clockwork

IkotuはSVNSET WAVESにも参加するスコットランドのトラックメイカー。
ジャジーでこちゃこちゃとしたダウンテンポエレクトロニカに丁度良くソリッドな要素が挟まれる。
声の入れ方やソロのフレーズが、ちょっと前のMetomeさんの風合いにも似てるかも。
カットアップは文字通り断絶をつくることのできる技法で、時空を直線で割ってく感じは版画っぽいよね。
あと、ダウンテンポの「寄せては返す」波のような周期の大きいグルーヴは、ビートの軽重と手数による粗密だけでなく、コードチェンジの粗密と跳躍度合いでも出せるんだなあと勉強になった。
名前の由来は遺骨なのかな。Kaijuって曲も出してるし。
もっとじっとり落ち着いた旧譜も良曲揃い。

Prrrrrrr Recordsは良リリース連発でしたね。
Persian Empireにkordz、EeMu氏、そして1968氏の復活……





5. Frederic Robinson - Flea Waltz

Frederic Robinsonはスイスのトラックメイカー。
前作までDnBのスタイルに片足置きながら爽やかなエレクトロニカをやってたが、今作はビートスキームがさらに自由になった印象。
澄んだ音を丁寧に、一番気持ちいい所に配置してグルーヴができている。
綺麗なエレクトロニカが好きな大半の人は笑いだしちゃうと思う、ここまで突き詰めるのかって。
職人性が音響的綺麗さだけじゃなくてリズムに一番出てるからやたらノレてしまうのも不思議な感じ。
Footworkの影響が出てるのがいくつかあり、Prrrrrrrのkordzと共作した#5なんかはわかりやすくかっこいい。




6. Alon Mor - Associative Delusions

Alon Morはイスラエルの音楽家。
メランコリックな上モノと超攻撃力のグリッチガバ、ブワンブワン鳴るニューロベースなどを武器に、10分超えの曲を連日作ってたりする多作家。
彼といえば、短い映像作品に合わせて作ったのか?というくらい自由な展開とアツいダイナミクスが次々と襲い来る……
というのがいつもの姿なんだけど、このEPはカット集のように3分台でワンモチーフで描かれている。
ドラムの一撃のえげつなさは抑えめに(かなり異常な音はしてるけど)、どちらかというと繊細な面が楽しめる良いEP。
ファンタジー映画のワンシーンのように堂々とした#3や、ニューロベースが管楽器のようにブロウする#5など音作りがとてもおもしろい。



7. superb lyres - Sober

superb lyresはs.lyreとl.lyreの二人組。このシングルはNight Owlからのリリース。
自分たちの音楽をloose electronicsと評している中でも、Crackleノイズや鍋底のようなへたれた音など、弱い音をのんびり組み上げているのがよかった。
僕は某Y氏のRemixつくった時期にけっこう参考にしてた。
ちなみにベストトラックとしては間違いなくこのSoberなんだが、名義的にはs.lyreソロのほうが素朴で小さい音楽をやっていて好みのものが多いかも。



8. Trian Kayhatu - Chil Pollins EP

オランダのTrian Kayhatuが2月にリリースした適当なシャレのタイトルのEP。
Darker Than WaxやBastardjazzに引っ張りだこのかれはタイムスケールが広めのモダンシンセファンクをやっている人という印象だったんだけど、
セルフリリースのこのEPはかなり音符が細かく、ビートもコードもパキパキと刻まれていく。
とにかく表題曲の#2、そして#5で高速スラップ打ち込みの疾走フュージョン/ネオソウルが楽しる。
一番お気に入りは#4で、ハープのアルペジオとフルートの細やかなフレーズ、軽〜いドラムとChoirがどんどん重なっていって、陽当たりのいい澄んだ空気みたいな爽やかさがある。

10月リリースのEP『IEKS』では影響を受けたアーティストにJulien MierからFrank Zappaまでが羅列されている。
色々聴いてるから色々できるタイプの人なんだな。





9. 環ROY×Taquwami×OBKR - ゆめのあと

買わせてくれないからずっとYouTubeで見てる。GAP 1969 MAGAZINE企画の特別コラボレーション?
声、トラック、映像、ロケーション、全て良いので観るたびに全て良いなあって思うし、
10秒おきくらいに「ここのこれがいいんですよ!!」って言いたくなるポイントが出て来る。
特に、あんなオルガンの間奏の展開、予想できるかい、すごい。

OBKRこと小袋成彬氏の歌声を聴いたのはこの曲が初めてだったんだけど、程なくして宇多田ヒカル『ともだち』を共作していたからびっくりした。
環ROYもTaquwamiも大好きだったから絶対に良いと思っていた上で、さらにすごい1ピースが加わり……
やっぱり聴くべきものが山ほどある




10. PARKGOLF - ナイロンとペットボトル

我らがパーゴル先生
この曲はCRUSH ONのようなかれのオリジナルスタイルと、GAL(超好き)みたいなフロアミュージックに振ったスタイルを折衷していて、(いや、ハーフで気持ちよくなる曲とイーヴンでステップ踏める曲、くらいの区別でしかないけど)
ただでさえ誰も作れないだろうユニークな配置と構造美において、これはもう一歩先に行った!と思った
「ここぞ ってところに それ が来る」気持ちよさのしくみの上で、それ の予想を超えるもんが来たり、予想させるスキを与えないみたいのがすごい

配置 構造 状況みたいなもんをデザインするぞって時、最小限のものでやるのは普通っていうか、
無駄 余計なものがないほど研ぎ澄まされるってのは当然っていうか、誰でもそうするよね
だから手数が多くてシステムしてる構造物を見るとめちゃくちゃ興奮する




それ以外だと〜、
いかれたNeuroBassIDM野郎のHigh DudeはEPが出た、Kuitersの120ハーフもの、HiphopとGlitchhopをシームレスに行き来できるCOPYCATT、かっこいいビートしか作れない病気のxander.RNDYSVGE、弾き語りで観れたのが最高だったハタダケイタ『111ヶ月戦争』、あとは、Mammal Jamのシングル、Monophobe『Double Tap』、Sine Twist『Perpetual』、Pulsate『Aegis』、FVLCRVM『Slipstream』、Flatland Sound Studio『Ocean Radio Planet』などがよかった。


本当にエレクトロニカが楽しく、Foley Beatなものを基軸にIDM、Neuro HopやMicro Funkなどが混ざり合っていいものがいっぱいあったなあ。Ambient Garageの方向も多く、FutureBassを取り入れてるのも(というか、FutureBassのPercs組みにFoley Soundはよく使われる)。
レーベルだとPrrrrrrr, Outtallectuals, Sekai Collective, PlayItLouder, Night Owl Collective, Surreal Recording, Upscaleが良かった。ダンスミュージックだとBabylon Recordsのトライバルなやつに注目してた。





2015年以前のリリースの10選

旧譜あんま掘らなくて、↑が本編でしたのでこちらはサラッと。
「去年の出てたけど聴いてなかった」「日々の暮らしで流れていた」とかそんなノリが多いです。


1. Everbeat - Shapes

2015年。Sekai Collectiveから出たのは今年だった。ヒップホップのムードの中にしっかりありつつも音種類の密度・編集がすごい。

2. Bell's Worth - Frabjous Day

2015年。High DudeやAlon Morとはまた違ったキチガイ。愛嬌と内蔵って感じ。本当に最高。あと曲切るところおかしくない?

3. Colugo - Happy accidents

2013年。グリッチパーカッションをファニーなシンセポップと合わせて、とても明るくて元気。このアルバムはカントリー要素やシンセ音色がVGM度高い。

4. Raymond Scott - Reckless Nights And Turkish Twilights

1992年。音源は30年代からの編纂。レイスコはシンセ物ばっか聴いてたけど、ジャズやラグタイムで聴いてもアホでたのしかった。

5. Moondog - Moondog

1969年。Mr.ScruffとOorutaichiの大好きな曲の元ネタが両方入っていて目ン玉飛び出ました。全貌を聴いたらこりゃサンプルするわって感想。

6. Chassol - BIG SUN

2015年。フィーレコに伴奏をつけて町の音を歌わせていく。気づいたときには来日公演が終わっており……ライブが本当に楽しそう。

7. Hiatus Kaiyote - Choose Your Weapon

2015年。去年の問題作を今年聴きました。こういうブレッブレのネオソウルはエレクトロニカ好きに刺さりやすいよね

8. 寺田創一 - Far East Recording 2

1993年。夏前に沖縄行ったんだけど、旅中でずっと聴いたり、旅先のDJでかけたりして、思い出と繋がったアルバム。

9. tomppabeats - tyttö ep

2015年。インストのビートテープはいろんなものがネットにあるけどtomppaはとっても安心して聞ける。生活のBGM。

10. DJ Funk - Booty House Anthems

1999年。いままで朝の辛い通勤電車ではロッテルダムを聴いて元気出すことが多かったけど今年はこれ。そういう意味ではこれも生活のBGM。






個人的な所感2016

むかしはエレクトロニカの一部でしか見られなかったりハウスのおまけ要素だったFoleyをたくさん使ったビートメイクがこんなにも流行るとは。嬉しい嬉しい。どしどしやられすぎて飽きないようにしよう。

好きな曲いっぱい見つかった一方で、おれの趣味的にはこりゃねえわ、というものも近い世界にいっぱいあったので、
「世にある曲すべてに対して、おれが好きな曲なんて実際数千、数万に1曲くらいなものだろうに、それが毎日バンバン見つかるように情報をコントロール出来ている、わざわざ登録するくらい好きなレーベルやアーティストからの新着メールが毎日何十件届き、それをさらに捌いて、いいものに出会える。この状況がすごいな」と思いました。

さまざまな著名アーティストが亡くなった一年でもありました。ニュースになるような有名な昔の音楽家をほとんど聴いていないのでむやみにR.I.P.など言うことをなんとなく避けていましたが、唯一ショックだったのはJean Jacques Perreyです。
かれの「60年代に作ったLPと同じくらい2010年のアルバムが素敵だ」という事実、(周りの人に助けられつつも)80歳を超えても新譜を出していることをとても愛していて、自分もそうやって年を取れるように頑張ろうと思っていたので、死んでほしくなかったです。
ではいつまで死んでほしくなかったかというと、際限がないです。しかし人はいずれ死ぬ。

おわり。

CONCRETE SOUND FOR OUR CHILDHOOD