音楽: 2013 Top 10 *2
今年の音源の振り返り記事がすでに各所で公開されているので、楽しく読んでいます。
僕も書きます。2種類。
- 2013年リリースで素敵だったオールジャンル10選
- 2013年に聴いてHercelotがモロに影響を受けたポップ10選
という感じでいきます。
やっぱ、聞く人として「こりゃええわ~~!」という感じと、作る側として「こりゃ学ばねば……!」という感じはわかれます。
数字が振ってありますが基本同列の10選です。
今年リリースされた素敵な10選
- Sons of the Morning - Speak Soon, Vol.1
- Eversive - Void Magick
- Marvin Marlyn - Slowing EP
- Metome - Objet
- Ta-Ku - Make It Last EP
- Aleph - Plexus
- Jimmy Pé - Fairy Tale EP
- ʞNԾノ丂Ǥ尺リ|̶|Ð - Leningrad
- Bwoy De Bhajan - 2032
- 1968 - Aporia
1. Sons of the Morning - Speak Soon, Vol.1
Prefuse73とTeebsのやつです。あんまり圧倒的だったんで、これだけは1位として順位つけます。
開かれたランドスケープにアンビエンスがウオーみたいなタイプの音楽ってピンと来ることが少ない中でこれはなんか、近かった。大自然の景色が遠くにあるんじゃなくてもう、自分の真後ろについて回る、息遣いも熱も、何やら生きているらしいものが視野外に居るのがビンビン分かる、みたいなそういう感覚でした。
類似の音楽は多々あるのにこれに心惹かれた理由が分析できてません。ともかく良かった。
2. Eversive - Void Magick
Sole Glow CollectiveよりEversive。
ある種のSynthものBeats Musicとして、めちゃくちゃ飛び抜けてる!派手な攻撃力!ということではなく、かといって難しいこともしてないんですけど、異常にバランスのセンスが良いです。"In 2 Infinity"のイントロだけでもだいぶ持ってかれますが、ハイファイな音色選びにも関わらず、どことなく90's的なくすんだレトロフューチャが漂うマージナルっぷり。
全曲お薦めですが"Beautiful Things"のシンセとサンプルの絡みは完璧です。
3. Marvin Marlyn - Slowing EP
Stereopticoからの衝撃のデビューから2年、Future FrequencyからMarvin Marlyn新譜。
前作でEdit Boogie路線に行くのかな~と少し残念だったんですが、とっびとびのBeatsもまたやってました。808的アプローチも携えて。"Dont Stop"Remixのビートとシンセの噛みあって無さとか、整合性を取らないゆえのリラーックスな、システムしない良さみたいなのがある。
ちなみにZUPTON SONから出してたEPもすこぶる良かったです。
4. Metome - Objet
MetomeさんのOPUS Cloudって今年だったんですね。折角なので先日出たばかりの方を…
Soundcloudで単曲公開されてたのとかコンピ参加曲とかもちょいちょいありつつ、ライヴで超攻撃力を誇り、強烈に刻み込まれた"Black Black"や"All Around Me"が収録されててもうありがたや~!という感じ。
全体的に、どういう脳味噌してたら作れるのか僕じゃトレースできない、圧倒的に緻密な構築です。頭の中での「こんな音楽あったらいいな♪」という妄想の上限すら、現実で突破されてしまいました。
5. Ta-Ku - Make It Last EP
Live For The FunkからTa-KuのEP。
ラスティ"Ultra Thizz"やドリコン"Draw"から始まったタイプの曲を僕は勝手に"ぶん殴り系"と呼んでるんですが大流行でしたね。いかに和声をエモくするかで勝負し、更に最近はカウンターのメロをかなり可愛い音色でやったり、好きな人にはたまらない環境なんだと思います。なんだか置いてかれた年寄りのような気持ちで、Ta-Ku印ならとにかく安心だろうと聴く"Broke As"はやっぱり、これまでと切り離されすぎてないサウンドで落ち着きます。
6. Aleph - Plexus
この2年でLA系のビート(ざっくりした言い方!)やってた人がトラップへ大移動したりした一方で、テクノへ向かう人もとても多く、そしてその大半はパッとしなかったんですが、Alephは早めに4つ打ちに身を移していただけあって?イケてます。テクノとしてイケてると言うよりは、フォーマットを変えても去勢されてないね!って感じ。
"Northern lights"ではレイヴもやってるし、"Spread out and dazzled"は声ネタ回しがモロにMetomeさん系統なので好きな人にお薦めです。
7. Jimmy Pé - Fairy Tale EP
OutlierとGergazからの共同リリース。
Jimmy Péはインターネットビートメイカーたちの中でも格別に好きで、カットアップやグリッチなどエディットがとても過剰で男らしいです。とにかくあっちこっちにエッヂが立っていて、メキシカンなギターカッティングを更にザクザク切った"Mexico"はMochipetやedITを思い出して涙します。
RemixerたちもかなりRemixに苦しんでるように見えるのですが、oddlogicはグレインなエディットで
独自の乗りこなしをしててよいです。
8. ʞNԾノ丂Ǥ尺リ|̶|Ð -Leningrad
knoisgryhd、ノイズ・グリッドと読みます。今年はかなり聴きました。
こちらもBrostep以前のGlitch Hopな出音なのですが、とにかくビートがえげつない。不快一歩手前のギチギチとしたクリップサウンドに、媚びっ気のない冷ややかな上モノ。言葉はないですが呪詛、儀式のような雰囲気もあります。AutechreがTrapやったらこんな感じ、とか安直に言ったらまずいですかね。いや、オウテカと違ってばっちり怨念、死へ連行されるイメージを感じます。やはり呪詛っぽい。
9. Bwoy De Bhajan - 2032
SOUND esc.よりBwoy De Bhajan。ほぼジャケ通りの内容です。
DjembeやKalimbaといったアフリカンエスニックな密林パーカッションで凄くサイケなビート作品になってます。Rain StickとかSeed Podみたいなパラパラとアタックがバラけ続ける音色とダブワイズのシナジーは恐ろしく、逃げ場なし!といった様相。Zack ChristがRemixで参加してますが鬼に金棒だし、ジャングルとかもういいから日本に帰して欲しい。
10. 1968 - Aporia
TANUKI NEIRIから1968さんがリリースすると知った時の感動たるや。中学生時にmuzieをずっと追っていて、一度音源を全削除されてたりして、もう曲が聴けることはないのかなとずいぶん思っていたのでした。フリージャズ作品の攻撃力が目立つ中で、名曲"明るい楕円の中に"の日向に浮かぶような燦然とした輝きはどうでしょう。とても言葉に翻訳できたもんじゃないですが
今年聴いてあたしも音楽もっと頑張ろって思った10選
- AtomTM & Masaki Sakamoto - Alien Symphony
- Raymond Scott - Manhattan Research, Inc.
- Jean Jacques Perrey - Circus Of Life
- WATCHMAN - LOTUSIZE
- Jimanica - Torso
- OKLobby - Resort
- bo en - pale machine
- フレネシ - キュプラ
- セラニポージ - オチャメカン
- きくお - きくおミク
1. AtomTM & Masaki Sakamoto - Alien Symphony
これは、1位。2010年リリース。ご存知チリの鬼才アトムハート aka セニョール・ココナッツと、神経内科医(かっこいい)でもあるサカモトマサキ aka SL@yRe & The Feminine Stoolξ。
テクノポップやニューウェーヴってあくまで人間がテクノロジーを駆使しているという感じだけど、こちらは逆転してヒューマノイドが人間らしくユーモラスに振る舞っているような感じでずっと未来。すごくスマートで可愛らしいのに趣旨が捻くれているのはある種フェイクポップ的でもあるし、"Alien(圏外)"からのポップスというスタンスはとても共感しました。一生聴く一枚な気がする。
2. Raymond Scott - Manhattan Research, Inc.
2000年リリース。だけども大体50s~60sの音源をコンパイルしたもののよう。今年の僕はモンドミュージックや電子音楽黎明期の一年生として色々聴いてたんだけど、これはそのきっかけとなった1枚。
3. Jean Jacques Perrey - Circus Of Life
2000年リリース。モンドに目覚めた後、JJPの音源は可能な限りさかのぼって沢山聴いたんだけど、70歳を越えてからのこの作品はもはやMoogシンセとかじゃなくてMidi音源みたいな音で、それでもすごく心動かされました。ああなりたい。
4. WATCHMAN - LOTUSIZE
2009年リリース。NARASAKIと組んでたりMelt Bananaのドラマーだったりした人。バンドミュージックに疎いからどう説明したものかわからないけど、シンセシーケンスの複雑なコンセプトにネオアコ的爽やかなエモーションが突き抜けている。猥雑さとパワーは本来相反するものだけど、両方のツボが押さえられててたのしい。
5. Jimanica - Torso
2012年リリース。生ドラムのグリッチで増えた手数と過剰なキメ、シンコペーション、でも殆どの曲にヴォーカルをフィーチャーしてたり、温度のある感じ。Ametsubコラボのやつしか聴いたことなかったからギャップも込みでたのしく聴いてました。
6. OKLobby - Resort
2013年リリース。今年なのかあ……柔和なシンセサウンドと躁な808にピッチシフトした声ネタの組合せ~でも、ウェイヴィーというよりもう海中深くなイメージ。中でも"NHK"は曲単位で今年ベストの一曲です。アクアリウムと石油王のジャケも強烈。Remix依頼してほんと良かったナァ~…
7. bo en - pale machine
2013年リリース。劇場型ポップ。こないだTomgggさんとも喋ったんだけど、やっぱりボーエン以前以後で一つ僕らの時代が変わった感覚があるよねと。沢山の人が今年ベストに挙げてそうですがやはり僕も!ガツンと喰らいました。無意識に課していたポップの枠や制約を思いっきりぶち壊していってくれた傑作です。
8. フレネシ - キュプラ
2009年リリース。この方面の音楽って聴いてがっかりすることのほうがどうしても多くってすぐお腹いっぱいになるせいで、フレネシさんの音源に手を出したのが今年入ってようやくでした。そんな懸念は一瞬で吹き飛ばされて三日三晩浸りきってたのが1月頭のことですぐに全作揃えて今年はサインもして貰えたし思い残すことないんですが、ラウンジー路線とテクノポップ路線を絶妙に過渡している本作を選びました。"スプロウル"と"ローウィッツアーク"を交互に聴き続ける。
9. セラニポージ - オチャメカン
2004年リリース。セラニも今年ようやく聴いてドハマりだったんです。福富幸宏プロデュース時代よりなんとなくササキトモコ時代のほうが好きで、4thは「2010年にこんな02~04年的ネオ渋谷系が生き残ってるなんて!」と興奮しました。でも"さよならいちごちゃん"が素晴らしすぎたので3rdを載せました。就活時に自己分析がつらすぎて泣きながら聴いてました。
10. きくお - きくおミク
2011年リリース。恥ずかしながらTribute盤参加の依頼が来るまで楽曲を聴いたこと無くて(同人時代のは聴いてたけど)勿論一発でヤラれてしまい。ミュージカルばりのアレンジの飛び方から強烈な歌詞までとにかく世界観が全力でまとめあげられていて、かつ定形外のアプローチも山盛りで、発明家だなあと思いました。きくおミク2も良かったけど(3は未聴)、"僕をそんな目で見ないで"が収録されてる1のほうを載せます。
個人的な所感2013
今年は、世間で人気出るものと自分の好みがガンガン離れてるなーという思いが強くて、あんまフロアーなDJやらないほうがいいのかもなーとよく思いました。流行がわかんないから温故知新するもん!ってまあ超ダサいんですがそれで楽しかったしとりあえずOKです。しっかり制作に還元していきたいね。
制作技術も過去一番学べた気がします。作品に反映されるまではまだ時間がかかる。
とにかく、自分のアルバムをリリースできたということと、就職先が決まったこと、これだけで万々歳です。
社会性はどん底まで落ちたけど。
来年からは嫌でも、自分の内面と向き合ってる暇なんて無くなると思うので、いい加減かっこいい生活を目指します。
まずは他人を喜ばせることを、もっと考えられるように。